2005/08/16(火) スーツのンゴマ—ゲデ

8/11から3日間、ケニア ワタム近くにある村・ゲデに行ってきました。ここは兄と慕う俵貴実がギリヤマ民族の太鼓を修行している村です。
彼が毎年主催しているンゴマの体験ツアー、その名も「ンゴマ ツアー」に合わせてゲデ内外から集まったたくさんのグループによる演奏を見せていただきました。
東アフリカには「マシンダノ」、直訳すると「試合」という形式のンゴマ対決があります。二つ以上のグループが同時に演奏し、集めた客の数によって勝敗を決めるという恐ろしいもので、近年ではポップスの世界でもマシンダノが行われることもあります。
今回はこのマシンダノ形式で行われたのですが、日本からンゴマ ツアーに参加した人たちが一つ一つのンゴマを理解しやすいように1グループずつ演奏することになりました。
速い展開と迫力で聴かせる「マブンブンブ」、最近創作された「チェチェ」、ゆったりとしたリズムでグルーブを作り歌詞で聴かせる「ナンバ」、複雑に作られたキメが美しい「ゴンダ」などなど。

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マブンブンブの写真です。
「ブンブンブ」という3本足の片面太鼓が使われます。皮をあまり強く張らないので、さわりを含み、倍音の多い音がでる。この太鼓を一人一台ずつ素手で打ちます。一定のフレーズを弱めに刻む時の気持ちのいい音の渦、歌とシンクロして全員で長いきめに移る時の大迫力。
簡単にいい音が出ない楽器というのは音色による表現の幅がとても広い、と思いますが、ブンブンブもそう。この村で5歳児が出す基本の音がなかなか出せません。その音を基準にした音色のバリエーションが数多くあります。
今回登場したグループはブンブンブのほかに「ムションド」という細長い太鼓(伸びのある音がでる)、「デベ」と呼ばれる金物を使用していました。

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デベの写真です。
トタン板(もちろんデベ用のものではなく、屋根を葺いた後の切れ端です)を2本の棒で鳴らします。
これが実に気持ちよくなまったリズムを刻みます。「筆舌につくしがたいリズムであった」と書いて、筆を置きたいところですが、がんばります。8分の6拍子から16ビートの間を浮遊する(ときに自由に動き回る)、ちょっと引きずるようなリズムです。これはリンバでもリケンベでもムビラでも聞かれるもので、リズム全体を大きな枠で捉えた懐の深さを感じます。
デベはそのほかのブンブンブやムションドがあらかじめ決められたフレーズを打ち出す間も同じリズムを刻み続けます。
その日ぼくの心に一番強く残ったものは、最後に登場した、ムゼー(年長者につける敬称)=ランドゥの衣装です。紺色のスーツに頭と腕には羽飾り、足にはンジュガといういでたち。
聞けばこのスーツはマシンダノ用に使われる特別なものだとか。古くからポルトガル、ドイツ、イギリスなどと交流していく中で広まったものでしょうが、ンゴマに取り入れるそのセンスが素晴らしい!
ここ数年、「アフリカを紹介する」というコンセプト以外のコンサートでは「いかにもアフリカ!」という衣装を着けないように努めているぼくにとって、思わぬところから援軍が現れた思いでした。
※ムゼー=ランドゥの衣装の写真を今はお見せすることが出来ません。ご了承ください。

バガモヨまでの帰り道、バスの車内で、アブバカ=サリムの曲を聞きました。ウードを伴奏に歌うイエメンの歌手です。コンゴの腰を揺さぶるリンガラ=ポップスとこぶしの利いたイスラムの音楽の同居。歴史的にアラブの国々との交流の深い、東アフリカならではの体験でしょう。
タンザニアのザンジバル島などを中心とした海岸地方ではアラブとの交流の中で生まれた「ターラブ」という音楽ジャンルもあります。文化の混ざり合い、その結果の化学反応を目の当たりにするとコーフンを禁じえません。

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俵貴実とンゴマ ツアーについては彼が主宰する東アフリカ太鼓グループ・ブルケンゲのウェブサイトをご覧下さい。

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