2005/08/09(火) 電気リケンベ写真報告—バガモヨ

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キンシャサ ホテル=ディアカンダから見た朝日

昨日タンザニアのバガモヨに帰ってきました。
キンシャサの空が薄曇なのか、車の排気ガスなのか、砂埃なのかぼんやりしていたことを考えると、
こちらの青空がとてもまぶしく、ありがたいものに感じられます。
コンゴ民主共和国は内戦が続いた影響で、外務省から渡航延期・退避勧告が出されている国です。今回危険とされる東部は避け、首都・キンシャサへのみ旅行したのですが、なるべく一人で歩かないなど、普段より心構えを変えて行きました。
内戦で両親を亡くしたトニー=シェゲ氏はパパ=ウェンバがキンシャサにもつ二つのバンドの内の一つ “ orch.first class de papa wemba ” のメンバーで、時間のあるときにはガイドとして、またインフォーマントとして付きあってくれました。 タクシー=バスと呼ばれるミニ=バス (タンザニアのダラダラ、ケニアのマタトゥと同じ大きさのバンですが、シートが木のベンチであるにもかかわらず30人ほども詰め込んで走ります)の乗り方やスリの多い地域、悪徳ポリスから逃れる方法など教えてくれ、ミュージシャンのつてを使って電気リケンベ奏者を探し出してくれました。

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先日のRTNCへのTV出演も彼(写真右)の差し金によるもので、その後街を歩くとやたらと「テレビ見たよ」と声をかけられるようになりました。

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ムブジマイなど東部に住むルバ民族出身者によるグループ。ベースリケンベ(座って弾いている青いリケンベ)の大きさに驚きますが、その音もヘビーメタルでかっこいい!

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同じグループより。
mbonda(太鼓)の一つで、打面に塗った黒蜜ろうの効果で強力なさわり音と音の伸びを出しています。

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二点とも “ kongo dintotila ” のリーダー・ペンベレ=マコシ氏です。
コンゴ民族が多く住むアンゴラ国境付近のンギディンガの生まれで、昔はラフィア=ヤシの繊維を使ってリケンベのキーを作っていたといいます。最近なって傘の骨を使ってキーを作るようになり、先日紹介したルバ民族のツクラ氏と同じくエレキ=ギターをヒントに電気リケンベを作りました。出来上がった時の感想は、「これはいい!ラフィア=ヤシで作るよりよっぽどでかくていい音がする!」

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修理中。
笑ってますが回線はつながったままなので、スピーカーからバチバチとすごい音が出ています。
感電注意!

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“ kongo dintotila ” のベーシスト。
電気リケンベは大音量とともに長い残響を得ました。不要な音の伸びを消すために、巧みにミュートしながら弾いています。

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キーの下に手製のピックアップが見える

ピックアップを使って音を大きくするラメラフォーンというと、ジンバブエでも電気ムビラが登場しています。日本やアメリカ合衆国、ヨーロッパなどの奏者の中にもピエゾ方式やコンデンサーマイクを使ったものを演奏する人もいます。ぼくもその一人です。
それらが、楽器本体の生の音を出来れば忠実に電気増幅しようとしているのと違って、電気リケンベはピックアップを使わなければ決して得られない、極めつけのさわり音・ひずみを出している、という大きな特徴があります。かつてのリケンベにラフィア=ヤシで作った針を添えたり、リンバでは蜘蛛の卵膜、ムビラでは貝殻や王冠などさわり音を出して音を響かせるさまざまな工夫がラメラフォーンには見られますが、電気リケンベのこのディストーションも、その工夫の延長と考えるのもおもしろいと思います。

「伝統」 あるいは「トラディション」 というものには、影響を受けあう中で絶えず新しいものを作り出していくという使命があるように思います。
いわゆる「先進国」でさわりの少ないオルゴール的な澄んだ音色のラメラフォーンがもてはやされている現状に対して、彼らの電気リケンベは強烈なアンチテーゼになるでしょう。

*****補足*****
ベルギーのレーベル・クラムドから発表された “ KONONO NO.1 ” のCDが今回キンシャサへ向かうきっかけの一つになりました。

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