2011/03/23(水) 岩手へ送る荷物にシャボン玉も入れることにした

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円形劇場ヘリオスにて(3/19 富山県南砺市)

自宅を流された岩手の友人一家へ送る荷物を詰めている。

「東北えらいことになってるけど、自分友だちいっぱいおるんちゃう?」
11日、巨大地震が起きたことを私は電話で知った。
テレビが自宅にないので、ラジオをつけツイッターをチェックすると
すべてが地震関連になっている。
つぶやきの中に、テレビのUSTREAM中継を見つけてクリックすると、
想像もしなかった映像が映っていて、規模の大きさに初めて気づいた。
とっさに仙台の友人に電話してしまった。
当然つながらないのでメールを打つ。
しばらくして家族ともに無事の返信があり、そこで初めてこんなときに数少ない電話回線を使ってはいけないということを思い出し後悔した。
ほかにも多くの友人、仕事関係者がおり無事を知りたい。
なぜか171の災害伝言ダイヤルがうまくつかえず、結局はmixiやツイッター、共通の友人経由などで多くの友人の無事を知った。
それでも、今になっても安否のわからない知人もいる。

地震のニュースをたんねんに追って行くと頭がクラクラしてくる。
ツイッター上では、拡散が必要な一次情報以外に、より刺激的な(思わず拡散したくなる)デマや、尾ひれのつきやすい二次、三次情報があふれ、自分自身どれを拡散すべきかずいぶん悩み、次から次にリツイートしてみたり、黙りこんでみたり、態度が定まらない。
そのまま原子力災害の大きなニュースの渦に巻かれる。
行政や電力会社の対応に、さらには御用学者の呑気な意見ばかりを流し続けるメディアに憤りを覚える(原発や行政は、選挙の結果でもあるわけだけれど)。
安否確認をメッセージとともに淡々と伝えるNHK FMを意図的に聴き、面識もない人の名前の羅列の裏にあるひとつひとつのストーリーに思いはせると、いたたまれなくなる。

イベントの自粛が相次ぐ中、地震の二日後にはステージに立った。
集まってくれた人たちと楽しく過ごした。
17日には、テレビ番組のオープニング・テーマを録音した。
普段はやらない仕事だが、親指ピアノの音が欲しいと乞われ、番組も好きなコナモン(コナを使った料理)がテーマだったので、頭を切り替えて作曲しマイクを前にした。
19日には、地震のために出演をキャンセルしたバンドの代打として、リンバ・トレイン・サウンド・システムとともに富山のバッター・ボックスに立った。
言葉で何か言おうにも、私の場合、全てが嘘っぽくなる気がしたので、演奏、そして客席とのエネルギー交換に集中した。
実に気持ちよく、センターに返した。
それにしても、3日前の緊急依頼に即応できるトリオ編成は身軽でいい。
「とにかく演奏したい」という欲求がすぐにかなった。
この日は幸運にも、メンバーも敬愛する菊地成孔さん率いるDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENと一緒だった。
菊地さんの毒舌MCの中に紛れたこの言葉、
「日本に安全なところなんてありません。あるとすれば我々ひとりひとりの心の中にしかないのです。」
安全地帯に言及するこの台詞をクサいと感じない、あるいは素直に感じ入るほどの状況に今、私たちはおかれている。
日本に住む全ての人が、対岸の火事ではなく、自分のこととして考えている。
こんな事態は、戦後初めてではないだろうか。

どんなときであろうと、音楽家が演奏するのは当然だ。
不要な自粛は何も生み出さない。
打ち上げはとても楽しかった。

岩手へ送る荷物にシャボン玉も入れることにした。

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仙台の友人より届いた地震直後の写真。

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