2006/09/08(金) コノノが笑わない訳

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コノノNo.1のリーダー・「パパ 」・ミンギエディと。
2006年9月3日 / 大阪 ラブリーホール かわちながの世界民族音楽祭より / サラーム海上さん撮影・提供

この夏は、怒濤のスケジュールで全国をかけめぐりました。
短期間にいろんなところで演奏して、いろんな人に出会えました。東京では汐留やお台場での催し、浜松や水戸ではワークショップ、富山のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドなどなど。移動がたいへんだったけどみなさんのお世話になってとても楽しい旅でした。

その合間に見に行った、地元の夏祭りの話をひとつ。
江州音頭を生演奏で踊れるので、毎年予定があいていれば出かけているのですが、今年もすばらしかった。ベースとドラムの打ち込みトラックをバックに、複数の歌い手が錫杖を振りながら歌い継ぐ。
そのトラックはなぜかレゲエ的なのですが、ぼくのバンドで打ち込みなども担当しているカツシンに訊いてみたところ、最近レゲエミュージシャンに音頭系のトラック製作の依頼がくることがあるのだそうです。古くからの演奏形態を維持することに固執するのとは違う、「生きた」伝統って感じがします。

はじめは一つの輪で踊っていたものが、次第に人が増え二重、三重の輪になっていく。共通の振りがあるので、「今年こそは」と奮起して振りを覚えたところ、足腰の使い方に多少フェイントが混じっていて、一回覚えてしまえば、とてものってくる。踊っている人たちの中にも、すべてを16ビートで解釈してはずむようにアレンジして踊っているお母さんもいたりする。
見様見真似で踊る。
歌い手がどんどん交代していく。
たまに踊りの輪から離れてウイスキーのお変わりをもらいに行く。
飲みながら踊りつづける。
いまや手足もかってに踊りのループの中に取り込まれている。
何も考えないでも踊れる・・・・・・。

最後まで踊り続けたぼくは、お母さんの一人に
「兄ちゃん、ええ踊りやったわ」
とお褒めの言葉をいただきました。光栄です。
楽しい場でした。
まさに、関西が世界に発信できるワールドミュージックです。

また、この夏は、コンゴ民主共和国の首都・キンシャサより電気リケンベのグループ・コノノNo.1が来日し、来日初日の水戸公演や最終日の東京公演など、自分も出演したものも含めて4公演を目の当たりにすることができました。CDで聴くよりもゆるゆるでとてもいい。メンバーのほとんどが、仏頂面してピクリとも踊らずに仁王立ちで演奏しているのも、音楽の都・キンシャサから来たミュージシャンっぽいです。ほかのアフリカの国のミュージシャンのように始めっから楽しそうに踊ったりはしないのです。
踊れるけど、踊らない。楽しいけど、笑わない。という美学がそこにあります。それが「かっこいい」のです。もちろん、女の子が多い会場では全開の笑顔で腰を振ったりもしますが。

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コノノの電気リケンベ。サラーム海上さん撮影・提供。

音を大きく増幅するためにとにかく音響機材のすべてのツマミを最大の「10」に上げ、アンプやスピーカーの劣化も手伝って音が歪み出す。
楽器本来のサワリ音の延長と考えれば納得のできる、まろやかなディストーション サウンド。同じフレーズをしつこく繰り返す気持ちよさ。まさに白眼の極み。
爆音というより、腰で踊れます。
ただ、フランスからツアーに同行している、ミキシング担当のエンジニア氏にきくと、毎回同じ歪みを出すために、エフェクター等いろいろ工夫をしているようです。「低音質」を維持して高音質で届けるためのテクノロジーです。

ステージに飾られるコノノのヴァン カルト(看板)には"L'ORCHESTRE FOLKLORIQUE"(民族音楽楽団)と書かれています。コノノの音を聴いて触発されて出かけたキンシャサで、たくさんの電気リケンベ・グループを見ました。そしてみな「俺らの伝統音楽だよ」といって演奏していたのを思います。
伝統が生きていれば、変化も「アリ」なんです。

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2005年8月キンシャサにて撮影。電気リケンベ グリープのひとつ・コンゴ ディントティラのヴァンカルトにも"ORCH. FOLKLORIQUE"の文字が。

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おまけ。パパ・ミンギエディ、タンザニアのリンバ初体験の図。8/24水戸にて。

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