2006/02/13(月) 2006年2月13日(月)太鼓が鳴り響く 

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開聞岳9合目付近より。このすぐ先が生まれ育った町です。


先週、鹿児島市の繁華街・天文館を歩いていたら、太鼓の音が聞こえてきました。

閉店後のお店のシャッターの前で、50歳くらいの男性が一人、見たこともない太鼓を打ち鳴らしています。
しいて言えば、バチを使うガーナのアトゥンパンに似ているのですが同じではないし、バチも見たらない。即興と思われるその曲のテンポはかなり速いのですが、やわらかい中低音が中心なので圧迫感がない。
何か惹かれて立ち止まりました。

そのうちに男性はソロバンのような鳴り物・二個を太鼓に取り付け、皮の張ってある打面とともに、鳴り物も打ち始めました。鳴り物を打つときに使っている手の平の手首ぎりぎりのあたりにはテーピングがしてあります。

前に置いてある竹筒に、時々通りがかりの人がお金を入れて行きますが、たちどまる人はほとんどいません。男性はそんなことお構いなしに太鼓を打ち続けます。

一曲終わるのを見計らって、話をききました。旅の人に違いない。


−どこから来たんですか?
男性:北海道から。こうやって太鼓を通りで叩きながら、もう10年日本中旅をしてる。沖縄からこっちに来たばかりだよ。
−その太鼓はおじさんが作ったんですか?
男性:そう。北海道の木を削って作った。モデルにした太鼓もない。自分の中で鳴っている音を出したいがために、いろんな形のものを作って試した。大きさの違う太鼓をパイプでつないでみたりいろいろ。やっと今の形に落ち着いたんだ。
—ゆるくて気持ちのいい音でした。
男性:太鼓ができてから10年練習したよ。人前では一切演奏せずに。そう頭の中の旋律を出すために鳴らし方や手の運びかたも研究した。
—10年ってすごいですね。
男性:納得のいく音になるまでは人に聴かせたくないからね。それから10年は旅をしながらあちこちの通りで演奏してるんだ。ほとんど野宿だね。
−うちに泊まってけ、っていう人も多いんじゃないですか?
男性:やっぱさ、どうしてもお互いに気を使っちゃうし。野宿は気楽だよ。寒い季節は南へ、暑くなったら北上だ。いろんなとこで演奏した。沖縄はいいねえ。鹿児島のこのあたりはすぐ警察が来るんだよな。これからは、国外にも出て演奏しようと思っている。


普段、あんまり人と話さないのでしょう、それから15分くらい彼はしゃべり続けました。
しゃべりながら、気配を感じて投げ銭の入った竹筒をさりげなく荷物の影に隔すと、ぼくの後ろから夜回りの警察官が現れました。お開きです。
太鼓を布で包みながら、男性の眼は「この辺りは、これだからねー。」と言っていました。

どこかの町でまた偶然会いたいなと思いながら、別れました。

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