2010/02/01(月) ウガンダ序章
※2010年の旅の記録は帰国後に綴ったものです。
首都カンパラ市内の市場。ホテルより。
バスは途中、飛沫をあげてズ太く流れる河を渡った。
ビクトリア湖から流れ出たナイル川はこの先スーダンやエジプトを通り抜けて地中海へ向かう。
ここに降った雨はとりあえず地中海行きの流れに乗せられるのだ。
何度か旅したエジプトなんてウガンダからは遠い国だと思っていたが、俄然近く感じた一瞬だった。
カンパラ発のバスに乗って6時間ほど、ウガンダ北部の町グルにやってきた。
ウガンダ北部に住むアチョリ民族が弾く親指ピアノのことは数年前に録音で初めて聴いた。
なじみのCDショップで薦められた一枚、Ensemble Watmon Amone / Uganda: Music Of The Acholi (輸入盤)には数台の親指ピアノによるキラビヤカな合奏が収められていたのだ。
音域ごとに大きさの異なる親指ピアノによるアンサンブルの緻密さは、同じく合奏を前提にしたジンバブエの親指ピアノ、ムビラを凌ぐものがあった。
アチョリの親指ピアノ、現地では「ルケメ」と呼ばれているらしい。
高音部のメロディーを形作るトレモロの早さが信じられなかった。
片手の親指で連打するには信じがたいスピードだったのだ。
この演奏方法については3つの弾き方を仮定した。
1.2台以上の楽器でトレモロを分割して弾いている。←1台あたりのスピードは半分以下になる。
2.右と左に同じ音程のキーをいくつか配置して左右交互に親指で弾いている。
3.血のにじむような訓練の結果として、一本の親指だけで連打している。
3つのうちのどれだろうか?
それがルケメを探す今回の旅のメイン・テーマだ。
ウガンダ北部は反政府勢力LRAとウガンダ政府間で戦闘が続いた地域であり、日本の外務省は「渡航の是非を検討してください」との情報を継続して発表している。
したがって青年海外協力隊もこの地域には派遣されていない。
グルに長く滞在し、アチョリ王国から親善大使に任命されている写真家の桜木奈央子さんから最新情報を得たことが大きな力になり、ここまで来た。
とりあえず宿へ荷物を置いて、遅い昼食をとる。
ヤギ肉のピーナッツソース煮と、ジャガイモに似た味の食用バナナがうまい。
ビールは、首都カンパラ滞在中に気にいったナイル・スペシャルだ。
水浴びをしてから町を歩く。
乾期なので、未舗装の道路をクルマが通る度に赤い砂埃が舞い上がる。
広大な敷地の国連の施設が宿の近くにあった。
UNと大書されたコンテナの中には、援助物資なのだろう麻袋が山積みになっていて、気が引き締まった。
夜、桜木さんに紹介してもらった地元の政治家、エマ氏が宿にやってくる。
この旅のきっかけになったCDの資料を見た彼は、一枚の写真を見て「これはワトモン・アモネだろ?今はカンパラに移住しているはず。知り合いだから連絡とっておくよ。」と言った。
さらに、「この町でルケメ弾くグループ知ってるから、紹介するよ」と電話をかけはじめ、ほどなく明日そのグループに会えることになった。
いつもの「親指ピアノを探す旅」は楽器そのものに出会うまでに長い時間聞き込みをしなければならなかったが、今回は早い!
(続く)