2011/03/02(水) アフリカ・ツアーその6 ミニマル演歌テクノの夜

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日本で車検を通らなくなったようなクルマが各国に輸出され、修理に修理を重ねて寿命をまっとうしていることはわりと知られており、ここザンジバルでも元気に第二の人生を歩む彼らに出会うことができる。
これらの写真は、今回ザンジバルで撮影した公共のバスだが、バス的な塗装を施さずに日本語がむき出しになったままなのは、金銭的問題の前に「ウチの会社は、性能のええ日本車を使てまんねん」というアピールだろう。

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アフリカ各国でミニバスの定番なのはハイエースだ。
"HIACE"の綴りは「ハイス」だとか「ヒアセ」などと読み替えられ、車内のシートアレンジは各地で乗せられるだけ乗せられるように変更されている。
タンザニアでは、補助席を含めた横一列に4人が座るのが標準で、営業時には立ち乗りを含めて30人以上が詰め込まれる。
しかし、これまで私が体験したミニバスの中で最強だったのはコンゴ民主共和国のキンシャサを走るそれであった。
後部座席はベンチ替わりの細い板が狭い間隔で渡されていた。
向こう脛が前席のベンチにあたってしまうため、お尻で座ることはできない。
お尻は後ろの人の膝の上にのっている格好だ。
全ての空間という空間を人が埋め尽くしていて、窓の外にぶらさがっている人も多い。
もはや何人が乗車しているのか分からない。
空車同然で走り回る日本の大型バスより、はるかに「エコ」である。

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こんな船も。

●2/9●
休日2日目。
停電でインターネットも繋がらない。
ひとりブラブラしていると、イスラムの礼拝を呼びかける声、アザーンが生声で響いて来た。
拡声器を通した割れた音質のアザーンしか聴いたことがなかったので、実に新鮮で立ち止まって全てを聴いた。
「祈れー祈れー祈らんかーいコラー」と聴こえていたスピーカー経由のアザーンの味わいが一気に変わった。
着地点をなかなか見せない繊細なコブシは意外なほどにダイナミクスをもっていて、より切実だった。
停電のおかげでいいものを聴けた。

きょうの夕刻からサウティ・ザ・ブサラ祭が始まる。
停電でも発電機を用意してあるはずなので、予定通りのはずだったが、強い風が吹いて開始時刻には雨が降り始めた。
屋根のないステージ上の機材にはビニールがかけられている、スタッフに訊くと最初の二つのグループは雨でキャンセルになったそうだ。
その中には、我が師匠故・フクウェ・ザウォセの長男ジュリアスが参加しているグループもあったのに見られず残念だ。
それにしても、観客にたいして何のアナウンスもない。
しかし皆のんびりと雨宿りしながら、その時を待っている。

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サウンド・システムの真下に雨宿りの地を見つけた人たち。

雨がやみ、ビ・キドゥデと来日したこともあるターラブ歌手・モハメッド・イリヤスがバンドとともにステージにあがった。
しかし、なかなかスピーカーから音が出ない。
スタッフがステージ上で回線チェックなどしている。
まだかまだかと観客は静かに見守っている。
みなお金を払って入場しているのだが、おおらかでいかにも「サウティ・ザ・ブサラ」な風景である。

ジャッ!!!

といきなりスピーカーから、すさまじいボリュームでアコーディオンの音が出た。
すると観客席から「ワーッ!」歓声がわき上がる。
おもしろいので一緒になって「ワー!」と叫ぶ。
また1分ほど沈黙。
スタッフがケーブルを差し替えている。
「・・・・・・・・・・・・・・・ジャッ!!!」
「ワーッ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・ジャッ!!!」
「ワーッ!!」
わざとこんなことをやっているのだろうかと、疑いはじめたころにやっと演奏が始まった。
一曲目はターラブのオープニングでは定番、「バシュラフ」と呼ばれるインスト曲だ。
優雅でアラビックな旋律をバイオリンやカヌーンが奏で、ダラブッカやコントラバスがリズムを刻む。
ビ・キドゥデも登場して数曲歌った。
この会場のどこかで、エリックが悲しそうな顔で喜んでいることだろう。

ひとり会場をうろうろしていると、声をかけられた。
スタッフのローズだ。
サウティ・ザ・ブサラではおなじみだが、数年前にロンドンの路上でばったり会ったときには驚いた。
コノノNo.1のコンサートに誘ってともに踊り回ったものだ。
ダンナさんと子どもを紹介してくれた。

いきなりビールをよこす男がいた。
そのロンドンに住むジョンだ。
フクウェ・ザウォセとその家族のドキュメンタリー映画をとった男。
ザ・ザウォーセ・ファミリー名義の名盤「バオバブの木からの贈り物」は彼の手による。
今はシンガポールに住んでいるとか。

アメリカ人のエマもやってきた。
故・フクウェ・ザウォセのもとでともにリンバを修行した仲だ。
この音楽祭では毎回のように顔を会わす。
いつだったか、ダル・エス・サラームでオリバー・ムトゥクジのコンサートがあったとき、広大な会場でばったり会ったこともある。

この音楽祭では、冗談のようにあちこちの友人に会うがさほど驚くこともなく、お互い「おっ、来てたか!」というような感じである。
世界中どこに住んでいても、同じ興味を持っていればどっかで会えるのだ。

さすがに、昔、大学祭に呼んでくれた玲子ちゃんに会ったのには驚いた。
青年海外協力隊でエチオピアに赴任しているのだとか。

ステージでは、ジャハズィ・モダン・ターラブが演奏している。
キーボードにプリセットされていそうな、チープなリズム・トラックにエレキ・ギターやベースを合わせ、金色・銀色のむやみにピカピカ、ゴージャスな衣装を身にまとったオカーチャンたちが歌う「モダン」なターラブで、私は2枚アルバムを持っている。
ミニマル演歌テクノとでもいおうか。
たまらん。

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