STUDIO VOICE誌(2006年1月号)全文掲載
大阪で発見されたアフリカ (インタビュー・文:吉本秀純 STUDIO VOICE 2006年1月号より)
「この夏もタンザニアに行って、おばあちゃんに霊を乗り移らせる儀礼に加わってリンバを演奏する機会があったんですけど、4〜5時間ぐらい延々と演奏し続けて、凄まじいものがありましたね。100メートルくらい離れたところで聴いていても、そのサイケデリックな音のうねりが目に見えるような・・・。親指ピアノやアフリカの民族楽器というと“大地の癒し”みたいなイメージが強くありますけど、ほんとはもっとトランシーで危ない音楽というか。個人的には、そこにこそどんどんと惹かれていきましたね」
そう話すのは、タンザニアのイリンバ(親指ピアノ)の世界的巨匠である故フクウェ・ウビ・ザウォセにリンバの演奏と制作を学び、大阪と京都の境目の山崎を拠点に活動を続けるサカキマンゴー。女性サックス奏者とのユニットMA-NGOMAや、大阪に在住する南アフリカ出身の知る人ぞ知るマリンバの名手=ジョゼフ・ンコシとのセッションなどと並行して完成させた初のソロ・アルバム『limba train』は、リンバのみならずジンバブウェのンビラも踏まえつつ、さらには日本語詞の曲も交えてオリジナルなスタイルを築いた作品。コノノNo.1の登場で再び熱い注目が集まる親指ピアノだが、日本からのレスポンスに相当する動きはすでにココにある。
「欧米で出回っているカリンバはオルゴールみたいにきれいな音がしますけど、現地ではそこに“さわり”(振動が発するノイズ)を出すために様々な装置を付けたり、本体の表側に空けた穴にクモの卵膜を張ったりして、どんどんと独自で改造していく。だからコンゴのコノノNo.1がリケンベをアンプに繋いでやっている音を聴いたときにも、これは究極の“さわり”だと思いましたね。『limba train』でも、その気持ち良さを出すために楽器の裏側や天井、少し離れたところにも合計5本のマイクを立てて録音して。エフェクトを使うところでは思いっきり使っていますけど、基本は自然のリバーブ感を生かしていて、ミックスにもかなり時間をかけました」
とはいえ、『limba train』にはコノノNo.1ばりのエグい楽曲が収められているわけではないが、“さわり”の魅力を引き出すべく音響面にこだわり抜かれたミニマルなグルーヴに満ちたこの作品には、最近のアフロ・ミニマルな傾向を強めるマイス・パレードのアルバムなどに通じる心地よさアリ。コノノNo.1が欧州のツアーをトータスとともに回っていたことの意義なども、本作を聴けばよりクリアに見えてくるように思える。また、HPを閲覧してもらえばわかるが、彼は先日コンゴにも足を運び、電気リケンベを用いるグループが数多く存在する“コンゴトロニクス”勢の奏法やエレクトリック化する仕組みを偵察してきたとのこと。四角い木箱の可能性を追求する旅はまだまだ続く。